2026/08/17
DX推進が社内で進まない会社に共通する3つの原因
DXを推進したいと考えていても、「何から始めればよいか分からない」「ツールを導入したが現場に定着しない」「担当者だけが動いていて社内全体に広がらない」といった課題を抱える企業は少なくありません。DXが進まない原因は、単にIT人材やシステムが不足しているからとは限りません。本記事では、DX推進が社内で進まない会社に共通する3つの原因を整理し、業務課題の見つけ方、社内の巻き込み方、システム導入・開発を含めた具体的な進め方まで、DXをこれから進める企業の担当者向けに解説します。
「DXを進める必要があることは分かっているが、具体的に何から始めればよいか分からない」
「新しいシステムやツールを導入したものの、現場で使われていない」
「DX推進担当者だけが動いていて、他部署を巻き込めない」
こうした悩みを抱えている企業は少なくありません。
DXが進まないと、「もっと新しいシステムを導入した方がよいのでは」「ITに詳しい人材が必要なのでは」と考えがちです。
しかし、DXが社内で進まない原因は、必ずしもシステムやIT人材の不足だけではありません。
多くの場合、DXの目的が曖昧、現場の課題が整理されていない、推進体制ができていないといった、システム導入以前の部分に原因があります。
この記事では、DX推進が社内で進まない会社に共通する3つの原因と、そこからどう改善していけばよいのかを解説します。
そもそもDXとは?システム導入との違い
DXは、単に新しいシステムを導入したり、紙をデジタル化したりすることではありません。デジタル技術を活用して、業務や事業そのものをより良い形へ変えていく取り組みです。
DXという言葉が広く使われるようになり、「DX=システム導入」と捉えられることがあります。
しかし、新しいシステムを入れただけではDXが実現したとは言えません。
デジタル化 | DX |
|---|---|
紙の申請書をWebフォームにする | 申請・承認フローそのものを見直し、処理時間を短縮する |
Excelをクラウドへ移行する | 部署ごとに分散した情報を統合し、意思決定に活用する |
顧客管理システムを導入する | 顧客情報を活用して営業活動やサービス提供方法を変える |
業務システムを導入する | システムを前提に業務プロセス自体を再設計する |
システムはDXを実現するための手段の一つです。
「何を導入するか」から考えるのではなく、「業務や事業をどう変えたいのか」から考えることが重要です。
DX推進が社内で進まない会社に共通する3つの原因
DXが進まない会社では、技術そのものよりも「目的」「現場」「推進体制」の3つでつまずいているケースが多くあります。
# | 原因 | 起こりやすい状態 |
|---|---|---|
① | DXの目的が曖昧 | ツール導入自体が目的になる |
② | 現場の課題を把握していない | 導入しても使われない |
③ | 推進体制と意思決定方法がない | 担当者だけが動き、プロジェクトが止まる |

原因① DXの目的が曖昧なまま進めている
「DXを進めること」自体が目的になると、システムやツールを導入しても成果につながりません。
DX推進で最初につまずきやすいのが、目的が曖昧なままプロジェクトを始めることです。
たとえば、
競合他社がDXを進めているから
経営層からDXを進めるように言われたから
業務をデジタル化した方がよさそうだから
新しいシステムを導入すれば効率化できそうだから
といった状態です。
これでは、どの業務を改善すべきか、どのシステムが必要なのかを判断できません。
「DXする」ではなく「何を変えるか」を決める
DXの目的は、具体的な業務や事業の変化として整理します。
曖昧な目的 | 具体化した目的 |
|---|---|
DXを推進する | 紙で行っている申請業務をなくす |
業務効率化する | 月20時間かかっている集計作業を5時間以内にする |
データを活用する | 営業状況をリアルタイムで確認できるようにする |
システム化する | Excelへの二重入力をなくす |
目指す状態が具体的になれば、その実現方法としてシステムが必要なのか、既存ツールで十分なのかも判断しやすくなります。
DXの成果を測る指標も決める
取り組みを始める前に、成果を判断するための指標も決めておきましょう。
作業時間を何時間削減するか
入力ミスをどの程度減らすか
問い合わせへの対応時間をどの程度短縮するか
紙・印刷・郵送などの費用をどの程度削減するか
受注率や継続率をどの程度改善するか
指標があることで、「システムを導入した」という事実ではなく、実際に業務が変わったかどうかを評価できます。
原因② 現場の業務や課題を把握せずに進めている
経営層やDX担当者だけで計画を作ると、「導入したが現場で使われない」という問題が起こりやすくなります。
DXによって実際に業務が変わるのは現場です。
しかし、DX推進担当者や情報システム部門だけで計画を作ると、日々の細かな業務まで把握できていない場合があります。
たとえば、管理側では、
「このExcelをシステムに置き換えれば効率化できる」
と考えていても、現場ではExcel以外にもメールや紙、チャットなどを組み合わせて業務を行っていることがあります。
その状態でシステムを導入しても、結局システム外の作業が残り、業務全体は効率化されません。
まず現在の業務を可視化する
システムを選ぶ前に、現在どのように業務が行われているのか整理します。
たとえば受注業務の場合です。
営業担当者がメールで注文を受ける
注文内容をExcelへ入力する
管理担当者へチャットで連絡する
在庫管理システムで在庫を確認する
出荷担当者へメールを送る
会計システムへ売上情報を再入力する
こうして可視化すると、どこに無駄があるのかが見えてきます。
DXの対象になりやすい業務を探す
すべての業務を一度にDXする必要はありません。
まずは、次のような業務がないか確認します。
課題 | 具体例 |
|---|---|
二重入力 | 同じ顧客情報を複数のExcelやシステムへ入力している |
手作業 | 毎月データをコピーして集計している |
属人化 | 特定の担当者しか処理方法を知らない |
紙 | 申請書を印刷し、押印して回覧している |
情報分散 | 顧客情報がメール・Excel・システムに分かれている |
確認待ち | 承認者が不在だと業務が止まる |
このような課題は、システムやデジタルツールによって改善できる可能性があります。
現場を「説得する相手」にしない
DXを進める際に、
「新しいシステムを入れるので使ってください」
と完成後に説明するだけでは、現場から反発される可能性があります。
重要なのは、導入前から実際に使う人を巻き込むことです。
現在困っていることをヒアリングする
新しい業務フローを一緒に確認する
画面や操作方法について意見を聞く
テスト段階で実際に操作してもらう
現場を「DXを受け入れてもらう相手」ではなく、一緒に業務を改善するメンバーとして参加させることが重要です。
原因③ DX推進の担当者・意思決定者が曖昧
「DX担当を一人決めた」だけでは、社内を横断するプロジェクトは進みません。誰が推進し、誰が判断するのかを明確にする必要があります。
DXでは、複数の部署にまたがる業務を変更することがあります。
そのため、DX担当者だけでは判断できない場面が何度も発生します。
たとえば、
現在の業務フローを変更してよいか
どの部署の要望を優先するか
予算を追加してよいか
既存ルールを廃止してよいか
といった判断です。
責任者が決まっていないと、各部署への確認に時間がかかり、プロジェクトが止まってしまいます。
DX推進で最低限決めたい3つの役割
役割 | 主な役割 |
|---|---|
責任者 | 目的・予算・優先順位について最終判断する |
推進担当者 | 各部署との調整やプロジェクト進行を担当する |
現場代表 | 実際の業務視点から要件や使いやすさを確認する |
会社規模によって一人が複数の役割を兼任しても構いません。
重要なのは、「誰に聞けば決められるのか」が明確になっていることです。
「DX担当者だけ」に任せると進まない理由
DXはIT部門だけのプロジェクトではありません。実際の業務を変える以上、経営・現場・ITがそれぞれ関わる必要があります。
DX担当者が一人で、
業務課題を探す
各部署へヒアリングする
ツールを比較する
社内を説得する
予算申請を行う
ベンダーと調整する
ところまですべて担当すると、プロジェクトが属人化します。
担当者が忙しくなればDX自体が止まってしまいます。
会社として取り組むのであれば、担当者個人の仕事ではなく、社内プロジェクトとして必要な時間と権限を確保しましょう。
DXは何から始める?最初から大きな改革を目指さない
全社システムを一気に刷新するのではなく、「課題が明確で、成果を確認しやすい業務」から小さく始める方法があります。
DXという言葉から、大規模な基幹システム刷新や全社的な改革をイメージすることがあります。
しかし、最初から大規模なプロジェクトを始める必要はありません。
まずは、改善効果を確認しやすい業務から始めます。
現在の課題 | 最初の取り組み例 |
|---|---|
紙の申請が多い | 申請・承認をオンライン化する |
営業情報がExcelに分散 | 顧客・案件情報を一元管理する |
毎月の集計に時間がかかる | データ集計を自動化する |
同じ情報を複数回入力 | 既存システム間のデータ連携を行う |
小さな業務でも、改善前後の効果を数字で示すことができれば、次のDX施策について社内の理解を得やすくなります。
既存SaaSとシステム開発、どちらを選ぶ?
課題が見つかったからといって、必ずシステムを新規開発する必要はありません。まず既存サービスで解決できるかを検討します。
既存SaaSが向いているケース | システム開発が向いているケース |
|---|---|
一般的な業務を効率化したい | 自社独自の業務フローが多い |
短期間で導入したい | 既存サービスでは要件を満たせない |
初期投資を抑えたい | 複数システムとの複雑な連携が必要 |
標準機能に業務を合わせられる | システムを競争力につなげたい |
重要なのは「DXだからシステムを開発する」のではなく、業務課題に対して最適な方法を選ぶことです。
DXのためにシステム開発を検討するタイミング
既存ツールの組み合わせだけでは業務上の課題を解決できない場合は、自社向けシステムの開発を検討する選択肢があります。
たとえば次のような状態です。
複数のSaaS間で大量の二重入力が発生している
自社独自の業務フローが既存サービスに合わない
既存システム同士を連携させたい
部署ごとに分散したデータを一元管理したい
顧客向けサービスと社内システムを連携したい
現在の基幹システムがDX施策の制約になっている
この場合も、いきなり開発会社へ機能一覧を渡すのではなく、現在の業務や課題を共有したうえで実現方法を検討するとよいでしょう。
DX推進の進め方|6つのステップ
「システムを選ぶ」から始めるのではなく、課題を見つけ、優先順位を付け、小さく実行して効果を確認する流れで進めます。
DXの目的を決める
業務や事業をどのように変えたいのかを整理します。現在の業務を可視化する
誰が、何を、どのような方法で行っているか確認します。改善すべき課題を見つける
二重入力・手作業・属人化などを洗い出します。優先順位を決める
効果と実現難易度から、最初に取り組む業務を決めます。解決方法を選ぶ
SaaS、業務変更、システム連携、新規開発などを比較します。効果を測定して次へ広げる
改善前後を比較し、次の取り組みへつなげます。

DX施策の優先順位は「効果」と「難易度」で考える
候補をすべて同時に進めるのではなく、効果が大きく、比較的実行しやすいものから着手します。

施策 | 期待効果 | 難易度 |
|---|---|---|
紙申請のオンライン化 | 中 | 低 |
集計作業の自動化 | 中 | 低〜中 |
複数システムのデータ連携 | 高 | 中 |
基幹システム全面刷新 | 高 | 高 |
大きなプロジェクトほど価値があるとは限りません。
まず成果を作り、社内に「実際に業務が改善した」という実感を増やしていくことも、DXを社内へ浸透させるうえで有効です。
DX推進が進まないときのチェックリスト
DX施策が止まっている場合は、システムを変更する前に次の項目を確認してみてください。
DXによって何を改善したいのか説明できる
成果を判断する指標が決まっている
現在の業務フローを把握している
現場が困っていることをヒアリングしている
実際の利用者がプロジェクトに参加している
プロジェクト責任者が決まっている
誰が最終判断するか明確になっている
最初から全社改革を目指していない
SaaS・業務改善・システム開発を比較している
施策実施後の成果を測定している
よくある質問(FAQ)
Q. DXとはシステムを導入することですか?
システム導入はDXを実現する手段の一つですが、それ自体がDXではありません。デジタル技術を活用して業務プロセスやサービス、事業のあり方を変え、企業の成果につなげることが重要です。
Q. DXは何から始めればよいですか?
まず現在の業務を整理し、時間がかかっている作業、二重入力、属人化、紙による処理などの課題を洗い出すことから始めるとよいでしょう。そのうえで、効果が分かりやすく実行しやすい業務から改善を始めます。
Q. DXが社内に浸透しない原因は何ですか?
目的が十分に共有されていないことや、現場が取り組みに参加していないこと、導入によるメリットを利用者が感じられていないことなどが考えられます。システムを導入する前から現場の課題を聞き、一緒に業務を設計することが重要です。
Q. DXには必ず新しいシステム開発が必要ですか?
必要ありません。既存のSaaS導入や現在利用しているツールの連携、業務フローの見直しだけで解決できる場合もあります。既存サービスで解決できない自社固有の課題がある場合に、システム開発を検討します。
Q. DX担当者にはITの専門知識が必要ですか?
一定のIT知識があると役立ちますが、必ずしも担当者自身が開発できる必要はありません。それ以上に、現在の業務を理解し、各部署の課題を整理して、社内外の関係者と調整できることが重要です。
Q. 中小企業でもDXを進められますか?
企業規模にかかわらず取り組むことは可能です。最初から大規模なシステム投資を行うのではなく、特定業務の自動化や情報共有の改善など、小さな課題から始めて成果を確認しながら範囲を広げる方法があります。
まとめ|DXが進まないときは「システム」より先に3つを見直す
DX推進が止まっているとき、すぐに新しいツールやシステムを探すのではなく、目的・現場・推進体制が整っているかを確認しましょう。
DXが進まない主な3つの原因を改めて整理します。
目的が曖昧 — 「DXすること」自体が目的になっている
現場の課題を把握していない — 実際の業務と施策が合っていない
推進体制がない — 誰が進め、誰が判断するのか決まっていない
まず「どの業務をどう変えたいのか」を整理し、現在の業務フローと課題を把握します。
そのうえで、SaaS導入、既存システムの連携、業務フローの変更、自社向けシステム開発などから適切な解決方法を選びます。
DXは、一度の大規模プロジェクトで完成するものではありません。
小さな課題から改善し、その成果を確認しながら次の業務へ広げていくことが、社内にDXを定着させるための現実的な進め方です。
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