2026/08/17
SaaS導入と自社開発、どちらを選ぶべきか
業務システムを導入するとき、「既存のSaaSを利用するか、自社向けにシステムを開発するか」で迷う企業は少なくありません。SaaSは短期間・低コストで導入しやすい一方、自社独自の業務に合わせにくい場合があります。自社開発は柔軟性が高い反面、初期費用や開発期間、運用保守が必要です。本記事では、SaaSと自社開発の違い、それぞれのメリット・デメリット、費用や導入期間、カスタマイズ性などの比較ポイントを整理し、自社に合った選び方を発注担当者向けに解説します。
業務効率化やDXを目的にシステム導入を検討するとき、最初に判断したいことの一つが、
「既存のSaaSを導入するのか、それとも自社向けのシステムを開発するのか」
という点です。
SaaSには、比較的短期間で導入でき、初期費用を抑えやすいというメリットがあります。
一方、自社独自の業務フローが多い場合や、既存システムとの複雑な連携が必要な場合は、SaaSだけでは対応できないこともあります。
逆に、自社開発であれば自由度は高くなりますが、開発費用や期間、リリース後の運用保守まで考える必要があります。
この記事では、SaaSと自社開発の違い、それぞれのメリット・デメリット、費用や導入期間、カスタマイズ性などの比較ポイントを整理し、どちらを選ぶべきかを解説します。
SaaSとは?
SaaSとは、インターネット経由で利用するソフトウェアサービスです。自社でシステムを一から開発せず、すでに提供されている機能を利用します。
SaaSは「Software as a Service」の略称です。
ソフトウェアを自社のPCやサーバーへインストールするのではなく、Webブラウザやアプリからサービスへアクセスして利用する形態が一般的です。
企業で利用される代表的な用途には、次のようなものがあります。
顧客管理(CRM)
営業管理
勤怠管理
経費精算
会計
人事・労務管理
プロジェクト管理
チャット・情報共有
サービス提供会社がシステム自体を管理するため、ユーザー企業側でサーバーを構築したり、ソフトウェアを更新したりする負担を抑えられます。
SaaS導入と自社開発の違い
SaaSは「すでにある仕組みに業務を合わせる」、自社開発は「自社の業務に合わせて仕組みを作る」という違いがあります。
比較項目 | SaaS | 自社開発 |
|---|---|---|
初期費用 | 比較的抑えやすい | 高くなりやすい |
導入期間 | 短い | 数か月以上かかることがある |
カスタマイズ性 | 制限がある | 高い |
運用保守 | サービス提供会社が行う | 自社または開発会社が行う |
機能追加 | サービス側の機能に依存する | 必要に応じて追加できる |
業務への適合 | 標準機能に業務を合わせる必要がある | 自社業務に合わせて設計できる |
外部連携 | 公開APIなどの範囲に限定される | 比較的自由に設計できる |

SaaSを導入するメリット
SaaSの大きなメリットは、システムを一から開発せず、すでに完成している機能を短期間で利用できることです。
1. 初期費用を抑えやすい
自社開発では、要件定義、設計、開発、テストなどに費用が発生します。
一方、SaaSではすでに完成しているサービスを複数の企業が共同で利用するため、大きな初期開発費用を負担せずに導入できます。
月額料金や利用人数に応じた料金体系になっているサービスも多く、小さく始めやすい点が特徴です。
2. 短期間で導入しやすい
SaaSは、アカウントを作成して初期設定を行えば比較的早く利用を開始できます。
自社開発では数か月以上の期間が必要になることがありますが、SaaSなら数日から数週間程度で利用を始められる場合もあります。
「まず早く業務改善を始めたい」という場合には大きなメリットです。
3. 運用・保守の負担を減らせる
SaaSでは、サーバーやソフトウェアの運用をサービス提供会社が行います。
一般的には、
サーバー管理
システムアップデート
セキュリティ更新
障害対応
などを自社で行う必要がありません。
社内に専門的なIT人材が少ない企業でも導入しやすい理由の一つです。
4. 新機能が継続的に追加される
SaaSでは、サービス提供会社が定期的に機能改善を行います。
自社で追加開発費用を負担しなくても、新しい機能を利用できる場合があります。
SaaSを導入するデメリット
SaaSは導入しやすい一方、自社専用に作られたシステムではないため、機能や運用方法に制約があります。
1. 自社の業務に完全には合わせられない
SaaSは多くの企業が利用することを前提に設計されています。
そのため、自社独自の業務フローに合わせて細かく変更できないことがあります。
たとえば、
独自の承認フローを設定できない
必要な入力項目を追加できない
画面構成を変更できない
特殊な権限設定ができない
といった制限があります。
2. 必要な機能がない場合がある
80%の業務はSaaSで対応できても、残り20%だけ対応できないということがあります。
結果として、
「SaaSを導入したものの、その部分だけExcelで管理する」
という状態になる場合があります。
業務全体を見たときに、手作業や二重入力がどの程度残るのかを確認することが重要です。
3. 長期利用では月額費用が積み上がる
SaaSは初期費用を抑えやすい一方、利用している間は継続的に料金が発生します。
特に、
利用者数が多い
複数のSaaSを導入している
上位プランが必要
といった企業では、年間の利用料が大きくなる場合があります。
導入時の費用だけではなく、3年・5年程度の総額で比較することも重要です。
4. サービス提供会社の仕様変更に影響される
SaaSの機能や料金体系は、サービス提供会社によって変更される場合があります。
自社でシステム全体を管理しているわけではないため、
料金プランが変更される
一部機能が終了する
画面仕様が変更される
サービス自体が終了する
といった外部要因の影響を受ける可能性があります。
自社開発のメリット
自社開発の最大のメリットは、自社の業務や課題に合わせて必要なシステムを設計できることです。
1. 自社の業務フローに合わせられる
既存SaaSへ業務を合わせるのではなく、現在の業務や将来の運用をもとに機能を設計できます。
特に、
独自の承認フローがある
業界特有の業務ルールがある
複雑な料金計算がある
独自の商品・サービス管理が必要
といった企業では、自社開発のメリットが大きくなります。
2. 必要な機能だけを設計できる
SaaSでは、多くの企業向けにさまざまな機能が用意されています。
その結果、自社では使わない機能が多く、画面や操作が複雑になることがあります。
自社開発であれば、自社に必要な機能に絞って設計できます。
3. 既存システムと柔軟に連携できる
社内ですでに複数のシステムを利用している場合、システム間のデータ連携が重要になります。
自社開発では、利用しているシステムの仕様に合わせてAPIやデータ連携機能を設計できます。
4. 将来の事業に合わせて拡張できる
自社で事業を拡大したり、新しいサービスを開始したりする場合にも、必要に応じてシステムを拡張できます。
システム自体が自社の競争力に関わる場合は、自社開発が適していることがあります。
自社開発のデメリット
自由度が高い反面、システムを作り、維持し続けるための費用と体制が必要です。
1. 初期費用が大きくなりやすい
自社開発では、プログラムを書く工程だけでなく、
業務整理
要件定義
設計
UI・デザイン
開発
テスト
インフラ構築
などに費用が発生します。
そのため、SaaS導入と比較すると初期投資が大きくなる傾向があります。
2. 導入まで時間がかかる
要件定義から設計・開発・テストを行うため、利用開始まで一定の期間が必要です。
すぐに業務改善を始めたい場合には、自社開発が適さないケースもあります。
3. 運用・保守が必要
システムをリリースした後も、
障害対応
サーバー管理
セキュリティアップデート
OS・ブラウザへの対応
機能改善
などが必要になります。
自社内で対応するか、開発会社と運用保守契約を結ぶなどの体制が必要です。
SaaSと自社開発、7つの比較ポイント
「SaaSの方が安い」「自社開発なら自由」と単純に判断せず、自社の業務や将来計画を含めて比較します。
比較ポイント | SaaS | 自社開発 |
|---|---|---|
初期費用 | ○ 抑えやすい | △ 大きくなりやすい |
導入スピード | ○ 早い | △ 開発期間が必要 |
カスタマイズ | △ 制限がある | ○ 自由度が高い |
独自業務への対応 | △ 合わない場合がある | ○ 合わせて設計できる |
運用保守 | ○ 提供会社が対応 | △ 自社または開発会社で必要 |
外部連携 | △ APIなど提供範囲に依存 | ○ 柔軟に設計できる |
将来の拡張性 | △ サービス仕様に依存 | ○ 必要に応じて拡張できる |
SaaSが向いている企業・業務
一般的な業務を効率化したい場合や、スピードと初期費用を重視する場合はSaaSが有力な選択肢になります。
一般的な業務をシステム化したい
できるだけ早く導入したい
初期投資を抑えたい
社内にシステム運用担当者が少ない
SaaSの標準機能に業務を合わせられる
独自機能がそれほど必要ない
たとえば勤怠管理、経費精算、Web会議、チャットなど、企業によって大きな業務差がない領域ではSaaSを活用しやすいでしょう。
自社開発が向いている企業・業務
自社独自の業務が競争力につながっている場合や、既存SaaSでは業務を再現できない場合は自社開発を検討します。
自社独自の業務フローが多い
既存SaaSでは必要な機能を実現できない
複数の既存システムとの連携が必要
利用者や事業の拡大に合わせて機能を増やしたい
システム自体が自社サービスの強みになる
長期間利用する前提でシステムを設計したい
迷ったら「業務をSaaSに合わせられるか」を考える
SaaSか自社開発かを判断するとき、重要な問いの一つが「今の業務を変更してSaaSの標準機能に合わせられるか」です。
たとえば、SaaSでは3段階までの承認フローしか設定できないのに、自社では5段階の承認を行っているとします。
このとき、
「5段階承認が絶対に必要だから、自社開発しなければならない」
とすぐ判断する必要はありません。
そもそも5段階の承認が現在も必要なのか、業務側を見直す選択肢もあります。
逆に、その承認フローが法令や業界特有のルールによって必要なのであれば、自社開発やカスタマイズ可能なシステムを選ぶ必要があります。
システムを業務へ合わせるだけでなく、業務をシステムへ合わせられないかという視点も持つことが重要です。

SaaSと自社開発を組み合わせる方法もある
「すべてSaaS」か「すべて自社開発」の二択ではありません。標準的な機能はSaaSを使い、独自部分だけを開発する方法もあります。
たとえば、
SaaSを利用する部分 | 自社開発する部分 |
|---|---|
会計 | 独自の受注管理 |
顧客管理 | 自社サービスとの連携機能 |
勤怠管理 | 特殊な業務管理機能 |
決済 | 独自の料金・契約管理 |
SaaSのAPIを利用して、自社システムとデータを連携する方法もあります。
この方法なら、一からすべてを開発するよりも費用や期間を抑えながら、自社独自の業務にも対応できます。

SaaS導入で失敗しやすいケース
「有名だから」「機能が多いから」という理由だけでサービスを選ぶと、導入後に業務へ定着しないことがあります。
機能数だけで比較する
SaaSを比較するとき、多機能なサービスほど良く見えることがあります。
しかし、自社で使わない機能が多くても意味はありません。
必要な業務を整理し、「必須機能を満たしているか」を基準に比較しましょう。
現在の業務を変えずに導入する
既存業務をすべてそのまま再現しようとすると、SaaSのメリットを活かせない場合があります。
導入を機に、不要な作業や承認フローを見直すことも重要です。
他システムとの連携を確認していない
導入後に、
「顧客情報を毎回CSVで移さなければならない」
となると、業務負担が増える可能性があります。
既存システムとのAPI連携やデータ入出力方法を事前に確認しましょう。
将来の利用人数を考えていない
1ユーザーあたりの月額料金が安くても、利用者が100人、500人と増えると大きな費用になります。
現在の人数だけではなく、将来の利用規模も含めて試算しましょう。
自社開発で失敗しやすいケース
自由に作れるからこそ、必要以上に機能を増やして開発費や期間が膨らむことがあります。
既存サービスでできることまで一から作る
ログイン、決済、メール配信など、既存サービスで代替できる機能まで独自開発すると、コストが増えます。
自社の強みにつながらない部分は既存サービスを活用できないか検討しましょう。
最初からすべての機能を作る
要望をすべて初期開発へ入れると、予算や開発期間が大きくなります。
機能を、
初期リリースに必須
できれば欲しい
将来的に追加する
に分け、段階的に開発する方法も検討しましょう。
SaaSと自社開発を費用だけで比較してはいけない
初期費用だけではなく、利用料・保守費・追加開発費などを含めた総コストで比較する必要があります。
たとえば、次のような考え方です。
費用 | SaaS | 自社開発 |
|---|---|---|
初期費用 | 導入・設定費 | 要件定義・設計・開発費 |
継続費用 | 月額・年額利用料 | サーバー・運用保守費 |
変更費用 | 上位プラン・追加オプション | 追加開発・改修費 |
移行費用 | 別サービスへの乗り換え | 将来的なリプレイス |
3年、5年と利用する場合に総額がいくらになるかを比較すると、判断しやすくなります。

SaaSか自社開発かを判断するチェックリスト
次の項目を整理すると、自社がどちらに向いているのか判断しやすくなります。
質問 | YESならSaaS寄り | YESなら自社開発寄り |
|---|---|---|
一般的な業務か | ○ | |
短期間で導入したいか | ○ | |
初期費用を抑えたいか | ○ | |
業務を標準機能に合わせられるか | ○ | |
自社独自の業務が多いか | ○ | |
特殊な外部システム連携が必要か | ○ | |
システムが事業競争力に直結するか | ○ | |
将来的に独自機能を増やしたいか | ○ |
どちらか一方にすべて当てはまる必要はありません。
SaaSをベースに不足部分だけ自社開発する方法も含め、最適な構成を検討しましょう。
導入・開発を決める前に整理しておきたいこと
最初から製品や開発会社を探すのではなく、まず現在の業務と解決したい課題を整理します。
現在どのような業務を行っているか
どの作業に時間がかかっているか
何を改善したいのか
システムを利用する人数
必須となる機能
既存システムとの連携有無
導入したい時期
想定している予算
将来的にどのように業務が変わるか
これらが整理できていれば、SaaSの比較もしやすくなり、開発会社へ相談する場合にも適切な提案を受けやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. SaaSとは何ですか?
SaaSは「Software as a Service」の略で、インターネット経由で利用するソフトウェアサービスです。ユーザー企業が一からシステムを開発・運用する必要がなく、月額や年額料金を支払って利用するサービスが一般的です。
Q. SaaSのメリットは何ですか?
初期費用を抑えやすいこと、比較的短期間で導入できること、システムの運用やアップデートをサービス提供会社へ任せられることなどがあります。
Q. SaaSのデメリットは何ですか?
カスタマイズできる範囲が限られること、自社独自の業務に合わない可能性があること、利用者数や利用期間によって継続費用が増えることなどがあります。また、サービス提供会社の機能変更や料金変更の影響を受ける場合があります。
Q. SaaSとパッケージシステムの違いは何ですか?
SaaSは一般的にインターネット経由でサービスを利用し、提供会社がシステムを管理します。一方、パッケージシステムは既成のソフトウェアを購入し、自社環境へ導入して利用する形式もあります。ただし現在はパッケージ製品をクラウド型で提供するケースもあり、サービスによって形態は異なります。
Q. SaaSとスクラッチ開発はどちらが安いですか?
一般的にはSaaSの方が初期費用を抑えやすいですが、利用人数や期間、必要なオプションによって継続費用が増える場合があります。スクラッチ開発は初期費用が大きくなりやすいため、3年・5年など一定期間の総コストで比較するとよいでしょう。
Q. SaaSでは対応できない部分だけ開発できますか?
可能な場合があります。SaaSがAPIなどの連携機能を提供していれば、自社向けシステムを追加開発して連携する方法があります。標準的な機能はSaaSを活用し、自社独自の部分だけを開発することで、費用と柔軟性のバランスを取ることができます。
Q. SaaS導入と自社開発のどちらを選ぶか相談できますか?
システム開発会社やIT支援会社によっては、業務整理の段階から相談できます。最初から「SaaSを導入する」「システムを開発する」と決めず、現在の課題と必要な機能を整理したうえで複数の実現方法を比較することが重要です。
まとめ|「SaaSか自社開発か」ではなく、業務課題から選ぶ
SaaSと自社開発にはそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらかが常に優れているわけではありません。
SaaSが向いているのは、
一般的な業務を効率化したい
短期間で導入したい
初期費用を抑えたい
標準機能に業務を合わせられる
といったケースです。
一方、自社開発が向いているのは、
自社独自の業務フローが多い
既存SaaSでは必要な機能を実現できない
複数システムとの複雑な連携が必要
将来的な機能拡張を重視したい
といったケースです。
また、SaaSと自社開発を完全な二択として考える必要もありません。
標準的な機能はSaaSを利用し、自社独自の部分だけを開発して連携するという方法もあります。
重要なのは、「どのシステムを導入するか」から考えるのではなく、「現在どの業務にどのような課題があり、どう改善したいのか」から考えることです。
業務課題と必要な要件を整理したうえで、費用、導入期間、柔軟性、将来性を比較し、自社に合った方法を選びましょう。
株式会社創新ラボ
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